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● ハッピー☆チャイルド --- あなたに吹く風ふわりふわり ●

「セイちゃんは、とっても良いニオイがするのね。」
「…は?」

放課後、久々の二人っきりの帰り道。アイが突然言い出した。
僕より10センチ以上したにいる彼女は、僕を見上げ笑顔を見せる。
ブロンドの髪が、揺れた。

「私ねぇ、セイちゃんのニオイ、好きだなぁ。」
「…それはどうも…。」
僕に笑いかける彼女にそれだけしか、それしか言えなかった。


「馬鹿じゃないの?そんな事でいちいち相談しに来ないでよこのヘタレ。」
「…そこまで言う事ないよね…サクラ…。」
サクラは、僕を睨みつけると、隣に居たコンの後ろで一つにまとめられている髪を、ぐいっと引っ張った。
しかも思い切り…うわぁ…痛そう…。
「コンも何とか言ってやってよ!」
「イタタ…痛いがな…。ちょっ、サクラ!待ちぃ…ホンマに痛い…。」
若干涙目のその言葉を聞いて、サクラは慌ててコンの髪を離した。
謝るくらいなら、はじめからやらなければいいのに…。

「でも、まさかアイが匂いフェチだったとはねぇ…。」
「…ちょっ、ちょっと待ってよ!何?匂いフェチって…。」
聞きなれない言葉に僕が問い返すと、サクラが睨む。そんなに怒らなくってもいいじゃないか…。
「アイが、あんたの匂いが好きって言ったんでしょ?」
「ほな、立派に匂いフェチやなぁ。」
コンもサクラの意見に同意する。どうでも良いけど、フェチって言われると…なんかなぁ…。
「しかし、よかったなぁ。匂いは好きやて、匂いは。」
「は、は余計だよ。…匂いねぇ…。」
僕は自分の右腕を上げて、鼻の近くへ持ってきた。
すん、と少し嗅いでみる。

別に特別に匂いなんてしなかった。
ただ、洗剤独特の香りと汗のニオイが、鼻に入ってきた。


「セイちゃん!一緒に帰ろう。」
放課後になって、アイが走り寄ってくる。
「…別に…良いよ。」
断る理由もないしね。僕らは昨日と同じ道を同じように帰る。
コンとサクラも誘ったのに断られてしまった。
気を利かせたつもりなんだろうが、こうも見え見えだとしウザイ…。

ふと、昨日のアイの言葉を思い出した。
匂い…そもそも匂いなんて意識した事もない。
アイのほうに、顔だけ向けてみる。さぁっ、と風が僕らの間を通り抜けた。

瞬間、香った。
少し甘い、人の香り。

心が穏やかになる。
あぁ、アイの匂いだ。そう思った。

「どうしたの?セイちゃん?」
顔を向けたまま黙っている僕に、アイが不思議そうに声をかける。
きっとアイの事だから、僕の気持ちとかそんなものわからずに、本能で言ったんだろうなぁ…。
本当、こういう事だけ鈍感なんだから。まぁ、そこがアイらしいけど。
「セイちゃん?」
僕は立ち止まって、真っ直ぐアイを見た。

「…僕も、アイの匂い好きだよ。」


途端、アイの顔が真っ赤に染まった。


「お、男の子が女の子の匂い…嗅ぐのはダメッッ!」

そう慌てて言うと、アイは走って行ってしまった。
真っ赤な顔のまま。

これだから、女の子ってよくわからない。
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